ペットにアロマは危険?

精油やハーブウォーターの安全性

精油やハーブウォーター

アロマセラピーの恩恵を受けたことがある方、またアロマセラピーに好感を持たれている方であれば、そのメリットを「大切な家族であるペットのためにも活かしたい!」と思われることでしょう。

アロマセラピーで用いる精油(エッセンシャルオイル)やハーブウォーター(芳香蒸留水)の使用においては、正しい知識がないと不安な気持ちが大きく、活用するのも難しいと思われるかもしれません。
特に動物へのアロマケアとなると、体のつくりや生理・代謝などの機能が人間とは異なるため、より一層不安が大きいのだと思います。

精油やハーブウォーターの安全性は、「香りを嗅ぐ」のか、「体に塗布する」のか、「経口摂取する」のかによっても大きく変わってきます。

精油の安全な取り扱いや適量についての理解は、私たちの身近にある「塩」を例にとると分かりやすいでしょう。

私たちの身近にある「塩」

私たちが生きていく上で欠かすことのできない「塩」。
1日当たりの必要摂取量は18歳以上の男性で8g未満、女性で7g未満が目安とされています。
食塩のLD50(lethal dose50:半数致死量)は3 g/kgとされており、体重60kgの場合は180gの塩を一度に摂取すると半数致死量に達します。
ちなみに乳幼児では、小さじ1杯(5~6g程度)で半数致死量に達します。
※LD50=ある一定の条件下で動物に試験物質を投与した場合に、動物の半数を死亡させる試験物質の量。

オレンジの精油

精油にも、経口毒性の強さを示す値があります。
例えば、オレンジ(LD50=5g/1kg)の精油を体重60kgの人が経口摂取すると仮定した場合、300ml(一般的に販売されている10mlビンで30本分)で半数致死量に達します。

精油の経口摂取や原液塗布は、すすめられません。
精油を経口摂取すると、種類によっては粘膜にダメージを与えます。また体内に取り込まれた精油は肝臓で解毒され腎臓を経由して尿として排泄されるので、一定以上の量を摂取した場合、内臓に過度の負担をかけることになります。

精油は必ず希釈して使用する必要があることが、このことからも理解できます。

アロマセラピーを学ばれた方(経験された方)であれば、このようなことは考えられないことだとすぐに分かるはずですが、正しい情報を得られないことで安易に精油を飲用したり原液で使用したりすることで、思わぬ事故を招く可能性があります。

※人(大人)の場合、その程度の量を摂取することは危険であると判断できますが、子どもや動物には判断ができず大変な事故につながる恐れがあります。保管には十分注意しましょう。

このように、私たちの身近にある「塩」でさえも使い方を誤ると健康に悪影響を及ぼすばかりでなく、命に危険が及ぶ可能性があります。
大切なのは、健康と安全のための適量、そして正しい使用方法を知ることなのです。

動物に精油を使用する場合

動物に精油を使用する場合

では、動物に精油を使用する場合はどうでしょう。

ネット上の膨大な情報の中には「ペットにアロマは危険」というような情報が流布され、不安や戸惑いを生じることもあるのではないでしょうか。

確かに、「経口摂取」や「原液塗布」であれば人間でなくとも危険であることは間違いありません。ただ、それ以外の方法でも「猫」や「フェレット」などは精油成分を体内に取り込むことで危険を伴うことはよく知られていますが、犬の場合は代謝機構と速度が猫やフェレットとは異なり、代謝しにくい成分でも速やかに生体外へと排出されていることが研究でも明らかになっているため、使い方さえ間違わなければ人間と同じようにアロマセラピーを楽しむことができます。

犬へのアロマセラピーは正しい知識と使用方法によって、私たち人間と同じように癒し作用や病状への補助療法、また飼い主とのコミュニケーションなどに活用することができるツールなのです。

フェレット

では猫やフェレットには一切アロマケアができないのかというと、そういうわけでもありません。

精油を使ったアロマケアはできませんが、ハーブウォーターの活用(神経過敏な気持ちを落ち着かせたいときに薄めたローズウォーターでトリートメントをするなど)やフラワーエッセンス療法は可能ですし、またアロマケア以外でもマッサージや指圧、食事療法など、猫やフェレットにもしてあげられることはたくさんあります。

なぜ猫に精油はNGなのか?

なぜ猫に精油はNGなのか?

人や犬、馬などはフェノール系物質が体内に取り込まれても、それらの物質を無毒化して体外に排出することができますが、猫やフェレットへの精油の使用は危険を伴うという結果が報告されています。猫やフェレットの祖先は肉食動物であり、積極的に植物を体内に取り込む必要がなかったため、植物の成分を代謝する機能が十分に整っていないと考えられています。

人間では有効な薬でも、猫には毒物になってしまうこともあります。
例えば、鎮痛剤に含まれるアスピリンや風邪薬に含まれるアセトアミノフェンはその代表的な薬剤で、人の風邪薬を猫には絶対に投与してはいけないということは良く知られています。
猫の体はアスピリンなどの薬と同様に、オレンジなどの柑橘系精油に多く含まれるモノテルペン炭化水素類、その他アルデヒド類、オキサイド類などの成分に対して許容を持たず、完全に代謝できずに体内に蓄積されることが確認されています。代謝されないということは、結果的には肝臓や腎臓にダメージを与えることになります。
急性毒性の危険もさることながら、長い年月を経て体内に蓄積された物質が中毒レベルに到達し、ある日突然中毒徴候が現れる慢性毒性にも注意が必要です。

ここまでで、次のことがお分かりいただけたと思います。

  • 『アロマが大丈夫なペットがいる反面ダメなペットもいる』
  • 『精油が大丈夫なペットもいる反面ダメ(または一部の成分がダメ)なペットもいる』
  • 『精油以外を使うアロマもあり(ハーブウォーターによるケアなど)それであれば大丈夫なペットもいる』

このようなホリスティックな視点を持つことで、ペットの種類それぞれの特性、体重、年齢、病歴などを把握し、適切な精油やハーブウォーターの選択や使用量、使用方法を見極め、リスクを回避し、最大限のメリットを得ることができるのです(人間のアロマセラピーも同じですね)。

猫に限らず、ペットへのアロマケアを行う上でトラブルを未然に回避するためにも・・・

  • ・精油やハーブウォーターは慎重に取り扱う。
  • ・100%天然の良質な精油やハーブウォーターを選ぶ。
  • ・手軽に購入できる精油については、誤用、誤飲すると体への危険性が高まることを認識しておく必要がある。
  • ・各動物種の習性や解剖生理学などをきちんと理解する(犬の嗅覚は優れているので濃度に十分気をつけるなど)。
  • ・安全性の高い精油やハーブウォーターに関する知識はもちろん、禁忌や注意事項なども理解し、適切な使用量や使用方法についてしっかりと理解する。

など、正しい知識を学び、身につけることが大切です。

さまざまなサイトを見てもこのような説明がなされておらず、ペットへのアロマについて必要以上に不安や混乱が生じているのだと思います。

安易な「ペットにアロマは危険」という判断によってペットアロマケアの扉が閉じられてしまうのは、大変残念なことです。

ペットアロマの基礎をきちんと身に付け、そのメリット・デメリットも理解する

アロマセラピーで用いる精油やハーブウォーターについて、またペットへのアロマケアについても信頼できる情報源を精査し、正しい情報を読み取る力を持って判断することが大切です。

アロマセラピー、特にペットへのアロマセラピーは一見難しいように思われるかもしれませんが、基礎さえしっかり理解することでその不安は解消されます。
そして、基礎を身に付け実践することで経験となり、経験を積んでいくことで学びはさらに深まっていきます。

だからこそ、PAWではペットアロマに関する正しい情報発信に努め、正しい知識を元に飼い主の方が愛するペットに適切なアロマケアをしてあげることができるようサポートすることが大切だと考えています。

アロマセラピーのメリット・デメリットをきちんと学び、理解した上で正しく使えば、人にもペットにも大いに役立つ自然療法になります。

PAWの「ナチュラルドッグアロマケアコース」では、犬に対するアロマケアを基礎からしっかり学ぶことができます。

安全・安心で正しいペットアロマで、愛犬との健やかなペットライフを♪

※PAWが提案するペットアロマは「犬」へのケアがメインになります。